終活とは?やることの全体像と、いつから・何から始めるか|遺品整理の現場から解説

写真は一部AI生成のイメージです

監修・編集責任

山本貴大

株式会社ローカルマーケティングパートナーズ 代表

本記事は、内閣府・厚生労働省の公的統計にもとづき、遺品整理・生前整理の現場で残された家族の負担を見てきた知見をあわせて、終活の全体像を中立にまとめています。

終活とは、人生の終わりに向けて、持ち物やお金、情報、医療や介護の希望、葬儀やお墓のことを少しずつ整えていく準備の総称です。死の準備というより、残りの人生を安心して過ごすための身辺整理と、残される家族の負担を減らすための備え、という2つの側面があります。

この記事では、終活でやることの全体像を5つの領域に整理し、いつから・何から始めるとよいかをまとめます。遺品整理の現場では、終活をしないまま亡くなった方の家財や書類に、残された家族が向き合う場面に日々立ち会います。その経験から、「これをやっておくと家族が本当に助かる」という優先順位も具体的にお伝えします。各領域の詳しい進め方は専用の記事にまとめているので、この記事を入口として使ってください。

終活とは(意味と言葉の由来)

終活は、人生の最期に向けた準備を指す言葉です。週刊朝日が2009年に連載した「現代終活事情」で知られるようになり、2012年には新語・流行語大賞のトップテンに選ばれました。いまでは、葬儀やお墓の準備に限らず、持ち物の整理や財産の棚卸し、医療の希望の共有まで含めた、幅広い準備を指す言葉として定着しています。

大切なのは、終活が「家族のため」だけのものではないことです。持ち物や財産を棚卸しする過程で、自分が何を持っていて、これから何を大事にしたいかが見えてきます。使っていない契約を解約すれば固定費が下がり、住まいが片付けば転倒などの事故のリスクも減ります。将来の不安がひとつずつ形になって片付いていくことは、これからを前向きに過ごす土台になります。

一方で、残される側から見ると、終活の有無は負担の差として現れます。亡くなった後、家族は葬儀の手配、役所や金融機関の手続き、住まいの片付けを、限られた時間のなかで一気に引き受けます。本人しか知らない情報が多いほど、この負担は膨らみます。終活は、その負担を元気なうちに少しずつ引き取っておく活動だと言えます。

終活でやることの全体像(5つの領域)

終活と呼ばれる準備は範囲が広く、「何から手をつければいいのか分からない」と感じる方がほとんどです。やることを5つの領域に分けて眺めると、全体像がつかみやすくなります。

終活でやること・5つの領域

物と住まいの整理

家財の仕分け、使わない物の処分、実家や住み替えの検討。

お金と相続の準備

財産目録づくり、口座・保険の一覧化、遺言書の検討。

情報の整理

エンディングノート、デジタルの契約やIDの一覧、連絡先。

医療・介護の希望

延命治療や介護についての考えを整理し、家族と共有。

葬儀・お墓の準備

形式や費用の目安を知り、希望を家族に伝えておく。

物と住まいの整理は、いわゆる生前整理です。家財を「残す・保留・手放す」に仕分け、使っていない物を減らしていきます。5つの領域のなかでもっとも体力と時間を使う作業で、後回しにするほど大変になります。進め方の手順や業者に頼む場合の注意点は、生前整理の進め方で詳しく解説しています。

お金と相続の準備は、預貯金・保険・不動産・借入を書き出して財産の全体像を見えるようにすることから始まります。財産の分け方に希望があるなら、法的な効力を持つ遺言書の検討に進みます。相続放棄や相続登記には期限があるため、財産目録は家族の判断を助ける大切な資料になります。財産目録の作り方や遺言書の基本は、生前整理でやっておく相続・法的な準備にまとめています。

情報の整理の中心は、エンディングノートです。基本情報や口座の一覧、連絡してほしい人などを1冊に書き残しておくと、家族は手探りせずに手続きを進められます。近年はネット銀行やサブスクリプションなど、本人にしか分からないデジタルの契約が増えており、その一覧化も欠かせません。何をどの順で書くかは、エンディングノートの書き方で項目ごとに解説しています。

医療・介護の希望は、判断力があるうちにしか整理できない領域です。延命治療をどう考えるか、介護が必要になったらどこで過ごしたいか。考えを書き出し、家族と話しておくと、いざというとき家族が「本人はどう望んでいたか」で迷わずに済みます。厚生労働省も、望む医療やケアを前もって考えて家族や医療者と繰り返し話し合う取り組みを「人生会議」と名付けて呼びかけています。

葬儀・お墓の準備は、費用の目安を知ることから始めるのが現実的です。葬儀の規模や形式で費用は大きく変わり、何も決めていないと家族は短時間で大きな出費を判断することになります。相場の全体像は葬儀費用の相場と内訳で、希望を事前に固めておく方法は葬儀の事前相談で扱っています。納骨先についても、お墓を継ぐ人がいるか、納骨堂や樹木葬などの選択肢を望むかを考えておくと、家族の迷いが減ります。

なぜいま終活が広がっているのか

終活という言葉が定着した背景には、人口構造の変化があります。厚生労働省の人口動態統計によると、令和6(2024)年の死亡数は160万5,378人で、調査開始以来もっとも多くなりました。総人口に占める65歳以上の割合も29.3%に達しています(令和6年10月時点・内閣府 高齢社会白書)。亡くなる人が増え、その一人ひとりに葬儀・手続き・片付けが発生する時代です。

もうひとつの変化が、ひとり暮らしの増加です。内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上で一人暮らしをする人の割合は、令和2(2020)年時点で男性15.0%・女性22.1%にのぼり、令和32(2050)年には男性26.1%・女性29.3%まで増える見込みです。同居する家族がいれば自然に共有されていた「どこに何があるか」という情報が、いまは共有されないまま残されるようになりました。家族がいても遠方に住んでいれば事情は同じです。

それでも、事前に準備をしたうえで葬儀を迎える家族はまだ少数派です。葬儀を経験した喪主2,000人への調査では、63.8%が事前の準備を何もしないまま当日を迎えていました(鎌倉新書・2026年)。遺品整理の現場で家族が直面する困りごとの多くは、この「準備のないまま」の結果です。終活が広がっているのは流行というより、家族構成の変化に対する現実的な備えとして必要性が増しているからだと考えられます。

いつから始めるか(健康寿命という目安)

終活を始める年齢に決まりはありません。退職、還暦、配偶者との死別、身近な人の相続を経験したときなど、人生の節目をきっかけに始める方が多いです。ただ、「いつかやろう」を先送りにしないための目安として、健康寿命という考え方を知っておく価値があります。

平均寿命と健康寿命の差(令和4/2022年時点)
男性の平均寿命 81.05年
男性の健康寿命 72.57年
女性の平均寿命 87.09年
女性の健康寿命 75.45年

内閣府「令和7年版高齢社会白書」より。健康寿命は、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間。

健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間(健康寿命)は、令和4(2022)年時点で男性72.57年・女性75.45年です。同じ年の平均寿命との差は男性で約8.5年、女性で約11.6年あります。この差の期間は、なんらかの健康上の制限を抱えながら過ごす可能性がある時間です。つまり、重い家具を動かし、大量の家財を仕分けるような体力仕事は、思っているより早く難しくなります。

年代別に見ると、60代は物の整理の適齢期です。体力があり、退職などで時間も作りやすく、量の多い家財に向き合えます。70代からは、書類や情報の整理、医療・介護の希望の共有といった、体力に頼らない準備の比重を上げていきます。80代以降やすでに体力に不安がある場合は、無理に自分で片付けようとせず、在りかの共有と意思の伝達を優先し、物の整理は家族や業者の力を借りる計画に切り替えるのが現実的です。

40〜50代の方にとっては、自分の終活というより、親の終活にどう関わるかが先に来ます。親と「どこに何があるか」を共有しておくことは、将来の自分の負担を減らす準備でもあります。

何から始めるか(現場から見た最初の一歩)

一般的には「エンディングノートから」と言われますが、遺品整理の現場から見ると、最初の一歩は在りかの共有です。亡くなった後の作業でもっとも時間がかかり、家族を疲れさせるのは、通帳・印鑑・権利証・保険証券といった貴重品の捜索だからです。どこにあるかさえ分かれば、手続きの大半は前に進みます。

終活の始め方・5ステップ
  1. 貴重品と重要書類の在りかをまとめる

    通帳・印鑑・権利証・保険証券・鍵。「どこに何があるか」を1か所に集めるか、一覧に書き出します。

    中身を全部見せる必要はありません。在りかが分かるだけで十分です。

  2. エンディングノートに基本情報を書く

    氏名や連絡先、口座やデジタルの契約の一覧など、書きやすい項目から埋めていきます。

  3. 物の整理を小さな範囲から始める

    押し入れ1つ、部屋1つから。「残す・保留・手放す」に分け、家全体を一度にやろうとしないのが続けるこつです。

  4. 家族と共有する

    ノートの在りかや決めたことを、信頼できる家族に伝えます。共有されて初めて準備が活きます。

  5. 専門的な準備に進む

    遺言書の作成、葬儀の事前相談、医療・介護の希望の整理など、必要に応じて専門家に相談します。

順番に迷ったら、「家族が困る順」に手をつけると考えてください。在りかが分からないことが最大の困りごとで、次が解約すべき契約の見落とし、その次が物の量です。逆に、遺影の準備やお墓のデザインといったテーマは、後回しでも家族が困ることはあまりありません。

完璧を目指さないことも重要です。エンディングノートは全項目を埋める必要がなく、物の整理も一気に終わらせる必要はありません。小さく始めて、年に一度ほど見直す。それだけでも、何もしない場合と比べて家族の負担は大きく変わります。

遺品整理の現場から見た「やってよかった終活」

遺品整理の現場には、終活をしていた方の住まいと、していなかった方の住まいの両方があります。その差は具体的で、金額と時間に表れます。

いちばん大きいのは、物の量が費用に直結することです。遺品整理の料金は間取りだけでなく家財の量で決まり、同じ間取りでも量が多ければ作業員の人数もトラックの台数も増えます。使っていない物を元気なうちに減らしておくことは、そのまま残される家族の出費と時間の軽減につながります。費用の目安は遺品整理の費用相場で公開しており、間取りと量から料金シミュレーターで概算を試すこともできます。

在りかの共有も、捜索の手間をはっきり分けます。貴重品の場所が分からない現場では、引き出しや衣類のポケット、本の間、仏壇の裏まで、1点ずつ確認しながらの作業になります。期間が延びるだけでなく、「大事な物をうっかり処分してしまわないか」という緊張が、家族と作業者の双方に重くのしかかります。反対に、在りかの一覧が1枚あるだけで、捜索はほぼ不要になります。

まだ使える物の扱いも、生前と死後で変わります。趣味の道具やコレクション、状態のよい家電は、本人が元気なうちなら、価値の分かる人に譲る、買取に出すなど納得のいく形で手放せます。亡くなった後では、家族には価値の判断がつかず、思い出の品ほど「処分してよいのか」と悩ませることになります。何を残し、何は手放してよいかの意思表示は、それ自体が家族への配慮になります。

住まいが賃貸の場合は、時間の制約が加わります。亡くなった後も家賃は発生し、退去には期限があります。限られた日数で家財をすべて運び出し、部屋を明け渡す負担は、持ち家の片付けとは質が違います。賃貸で暮らしている方は、家財を身軽にしておくことと、契約書や管理会社の連絡先を分かるようにしておくことが、そのまま家族への備えになります。部屋に残った家財がどう扱われるかは、残置物とはで解説しています。

おひとりさま・賃貸住まいの終活

頼れる家族が近くにいない方にとって、終活は「誰が動いてくれるのか」を決めることから始まります。物や情報の整理と並行して、死後の手続きの担い手を確保しておく必要があるからです。

親族に頼める場合は、その方に在りかと希望を共有しておきます。頼れる親族がいない場合は、葬儀や納骨、契約の解約といった死後の手続きを第三者に依頼する死後事務委任契約という方法があります。ほかにも、日常の安否確認を行う見守りサービス、入院や施設入居の際の身元保証サービスなど、単身者向けの仕組みが増えています。いずれも契約内容と費用はさまざまなので、複数を比較し、内容を書面で確認してから決めることが大切です。

賃貸でひとり暮らしの場合は、残された家財の扱いが連帯保証人や大家さんの負担になりやすいという事情もあります。家財を減らしておくこと、緊急連絡先を伝えておくこと、重要書類をまとめておくこと。この3つだけでも、万一のときに周囲にかかる負担は大きく変わります。

家族と共有して、はじめて終活になる

終活の準備は、本人の頭の中やノートの中にあるだけでは機能しません。家族が「準備があること」と「その在りか」を知っていて、初めて役に立ちます。前述の調査でも、葬儀社を自分で決めた喪主の約9割は、相見積もりを取らずに1社だけで決めていました。逝去後の限られた時間のなかでは、じっくり比較したり探したりすること自体が簡単ではありません。だからこそ、希望や準備は元気なうちに家族へ伝えておく意味があります。

家族への切り出し方に決まった形はありませんが、現場で聞く範囲では、帰省や法事など家族が集まる機会に、軽い話題として持ち出すのが自然です。「エンディングノートを書いてみた」「大事な書類はこの棚にまとめた」と在りかを伝えるだけでも、共有としては十分に機能します。

親に終活をすすめたい立場の方は、順番に注意が必要です。いきなり「片付けよう」と切り出すと、人生を否定されたように感じさせてしまい、かえって話が進まなくなります。「どこに何があるかだけ教えてほしい」という在りかの確認から入り、物の整理は本人のペースに任せる。この順番なら、親の自尊心を守りながら、家族として最低限必要な情報を確保できます。

終活の注意点(やりがちなつまずき)

終活を進めるうえで、つまずきやすい点も知っておいてください。

1つ目は、完璧主義で止まってしまうことです。エンディングノートの全項目を埋めようとして挫折する、家全体を片付けようとして初日で力尽きる、というのは典型的なパターンです。小さく始めて続けるほうが、結果として多くのことが残ります。

2つ目は、一人で決めて家族に押し付けてしまうことです。葬儀の形式やお墓の希望は、実行するのは残された家族です。希望は伝えつつ、最終的な判断の余地を家族に残しておくと、双方の負担になりません。

3つ目は、その場での高額な契約です。終活に関わるサービスには、葬儀の生前契約や互助会、訪問での買取など、契約を急がせる形のトラブルが相談機関に寄せられているものもあります。金額の大きい契約は即決せず、複数の選択肢を比較し、解約の条件まで書面で確認してから決めるようにしてください。葬儀まわりの契約の注意点は葬儀の事前相談で、買取や業者選びの注意点は生前整理の進め方で詳しく扱っています。

4つ目は、書いたきり放置してしまうことです。口座や契約、気持ちは変わります。古い情報のまま残ると、かえって家族を混乱させることもあります。年に一度など区切りを決めて、内容を見直す習慣にしておくと安心です。

まとめ

  • 終活とは、物と住まい・お金と相続・情報・医療と介護の希望・葬儀とお墓という5つの領域を、元気なうちに整えていく準備の総称です。
  • 背景には、死亡数の増加とひとり暮らしの増加があります。準備のないまま亡くなると、残された家族が短時間ですべてを判断することになります。
  • 始める年齢に決まりはありませんが、体力を使う物の整理は健康寿命の視点から早めが有利です。
  • 最初の一歩は、貴重品と重要書類の在りかを1か所にまとめること。現場で家族がもっとも困るのは捜索だからです。
  • 準備は家族と共有されて初めて機能します。完璧を目指さず、小さく始めて定期的に見直してください。

参考にした調査・制度

よくある質問

終活とは何をすることですか?
人生の終わりに向けた準備の総称で、物と住まいの整理、お金と相続の準備、情報の整理、医療・介護の希望の共有、葬儀・お墓の準備という5つの領域に分けられます。すべてを一度にやる必要はなく、できる領域から少しずつ進めるものです。
終活は何から始めればよいですか?
貴重品と重要書類の在りかを1か所にまとめることから始めるのがおすすめです。遺品整理の現場では、通帳や権利証の場所が分からないことが家族の最大の負担になっています。あわせて、押し入れ1つなど小さな範囲から物の整理を始めると無理がありません。
終活はいつから始めるべきですか?
決まった年齢はありません。ただ、健康上の問題で日常生活が制限されずに生活できる期間(健康寿命)は男性72.57年・女性75.45年(令和4年時点)とされ、体力が必要な物の整理は元気なうちが適しています。退職や子どもの独立などの節目が始めどきです。
終活にお金はかかりますか?
エンディングノートの記入や持ち物の整理など、大半のことは費用をかけずに始められます。遺言書の作成や整理業者への依頼といった専門的な準備には費用がかかるため、必要になった段階で複数の見積もりを取って比較するのが安心です。
親に終活をすすめるにはどうすればよいですか?
「片付けて」と迫るのではなく、帰省や法事などの機会に「どこに何があるかだけ教えてほしい」と在りかの共有から切り出すのが現実的です。本人の気持ちを尊重し、勝手に物を処分しないことが、話し合いを続けるうえで大切です。
おひとりさまの終活では何を優先すべきですか?
自分の死後の手続きを誰が行うかを決めておくことが最優先です。頼れる親族がいない場合は、死後事務委任契約などの制度を検討します。賃貸住まいの場合は、部屋に残る家財の扱いについて連帯保証人や大家さんに負担がかかることも踏まえて準備しておくと安心です。

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