直葬(火葬式)の費用はいくら?全国平均43万円と東京の火葬料・流れ・注意点

写真は一部AI生成のイメージです

監修・編集責任

山本貴大

株式会社ローカルマーケティングパートナーズ 代表

本記事は、鎌倉新書「お葬式に関する全国調査」、厚生労働省の人口動態統計、東京都(監察医務院・都立/公営火葬場)、墓地埋葬法(e-Gov法令)などの公的・一次情報にもとづいて内容を確認しています。

直葬(ちょくそう)は、通夜や告別式を行わず、火葬だけで故人を見送る方法です。「火葬式」「火葬のみ」と呼ばれることもあります。費用をもっとも抑えられる形式として選ばれていますが、「安いはずが、別途費用で思ったより高くなった」「あとで菩提寺とトラブルになった」という声も少なくありません。

先に結論をお伝えします。鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」(2024年)によると、直葬・火葬式の平均費用は約42.8万円でした。ただしこれは含まれる範囲によって幅があり、火葬料そのものも地域で大きく変わります。そして直葬を選ぶ方ほど、火葬のあとに続く遺品整理や住まいの片付けまで含めた「本当の総額」を見ておく必要があります。

この記事では、直葬の費用相場と東京の火葬料の実額、別途になりやすい費用、流れと注意点、そして直葬後の片付けの費用までを、特定の葬儀社に誘導せず中立にまとめます。遺品整理の情報を扱う立場から、火葬のあとに続く費用まで含めて解説するのが、この記事の特徴です。

直葬(火葬式)とは

直葬は、宗教的な儀式や式典を行わず、ご遺体を火葬することだけで見送る形式です。一般的な葬儀が「通夜 → 告別式 → 火葬」と進むのに対し、直葬は通夜と告別式を省き、火葬炉の前で短いお別れをして火葬します。「火葬式」はほぼ同じ意味で使われ、火葬前に短い読経やお別れの時間を設ける場合に使われることもあります。

日本では、亡くなった方はほぼ火葬されます。墓地埋葬法では「火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない」(第4条)と定められており、火葬は必ず火葬場で行います。直葬は、この火葬に必要な最小限の手配だけで構成される形式だと考えると分かりやすくなります。

直葬が選ばれる背景

直葬を選ぶ人は近年増えています。鎌倉新書の最新調査(第7回・2026年)でも、直葬・火葬式は前回より微増し、葬儀の多様化が進んでいることが示されています。背景には、いくつかの社会的な変化があります。

ひとつは、亡くなる人が増える多死社会です。日本の年間死亡数は令和6年(2024年)に1,605,378人と過去最多で、4年連続で増えています。高齢の単身世帯が増え、大規模な葬儀を望まない人や、参列者が少ない見送りが自然と選ばれるようになりました。

もうひとつは、費用や価値観の変化です。儀式よりも費用を抑えたい、宗教的な形式にこだわらない、遺族に負担をかけたくないといった考え方が広がり、必要最小限で見送る直葬が受け入れられています。感染症の流行を機に、少人数での見送りが定着した面もあります。

直葬の費用相場【全国平均 約43万円】

まず、他の形式と比べた直葬の位置づけを確認します。

形式別の葬儀費用の平均(全国)
一般葬 約161万円

通夜・告別式を行い、幅広く参列する

家族葬 約106万円

家族や近しい親族など少人数で行う

一日葬 約88万円

通夜を省き、告別式と火葬を1日で行う

直葬・火葬式 約43万円

儀式を行わず火葬のみ、または短いお別れのみ

出典:鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」2024年

直葬・火葬式の平均は約42.8万円で、形式のなかでもっとも費用を抑えられます。ただし、直葬の費用は「どこまでを含むか」で大きく変わります。火葬料と最低限の搬送・安置だけの構成なら十数万円台から、棺や骨壷、ドライアイス、スタッフの対応などを含むと40万円台まで、業者やプランによって幅があります。広告の「〇万円プラン」は最低限の構成であることが多く、実際の総額とは分けて考える必要があります。

なお、火葬料は公営と民営で差があり、公営の火葬場が利用できる地域では費用を抑えやすくなります。東京のように民営の火葬場が中心の地域では火葬料が高めになりやすく、直葬でも総額が上がる傾向があります。相場を見るときは、全国平均だけでなく「自分の地域で、どの火葬場を使うか」まで確認しておくと、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。

直葬の費用の内訳

直葬の費用は、おもに次の項目で構成されます。金額を比較するときは、この各項目が「含まれているか」「別途か」を確認すると、業者ごとの差が見えてきます。

  • 搬送費:病院や自宅から安置場所、安置場所から火葬場までのご遺体の搬送。距離によって加算されます。
  • 安置費用・ドライアイス:火葬までご遺体を保管する費用。火葬まで日数が延びると加算されます。
  • 棺・骨壷:ご遺体を納める棺と、遺骨を納める骨壷。
  • 火葬料:火葬場に支払う料金。公営か民営か、地域や住民かどうかで大きく変わります(次章)。
  • 人件費・手続き代行:スタッフの対応、死亡届や火葬許可の手続き代行など。

このなかで金額の地域差がもっとも大きいのが火葬料です。次に、代表的な例として東京の公営火葬場の実額を見ます。

【東京の実額】公営火葬場の火葬料

火葬料は、公営(自治体などが運営)か民営かで差が出ます。東京の公営火葬場の火葬料を、公式の料金表から確認します。

東京の公営火葬場の火葬料(大人1名)
臨海斎場(組織区民) 44,000円

港・品川・目黒・大田・世田谷の一部事務組合。令和5年改定

都立瑞江葬儀所(都民) 59,600円

東京都営。式場を持たない火葬専用。令和4年改訂

都立瑞江葬儀所(都民外) 71,520円

住所が都外の場合

臨海斎場(区外) 88,000円

組織区以外にお住まいの場合

出典:都立瑞江葬儀所 利用案内(東京都公園協会)/臨海斎場 料金表。いずれも各施設公式の火葬料(大人)。

同じ公営でも、住民かどうかで火葬料が変わります。臨海斎場は組織区民なら44,000円ですが、区外だと88,000円と倍になります。都立瑞江葬儀所は都民59,600円で、式場を持たない火葬専用の施設のため、直葬に向いています。

東京にはこのほか民営の火葬場もあり、火葬料は公営より高めに設定されていることが一般的です。「直葬は安い」という印象があっても、東京では火葬料だけで数万円から10万円近くかかり、住まいの地域や利用する火葬場で総額が変わります。実際に検討するときは、利用予定の火葬場の料金を必ず確認してください。

直葬の流れと必要書類(死後24時間ルール)

直葬は儀式を省くぶん流れがシンプルですが、法律で決められた手順があります。

直葬の流れ
  1. ご逝去・搬送

    病院や自宅から、安置場所へご遺体を搬送します。

  2. 安置

    火葬まで安置します。亡くなった当日にすぐ火葬することはできません。

    墓地埋葬法により、原則として死亡後24時間を経過しないと火葬できません(妊娠7か月未満の死産などを除く)。

  3. 死亡届・火葬許可

    死亡診断書を受け取り、死亡届を市区町村へ提出して火葬許可を受けます。

  4. 納棺・出棺

    棺に納め、火葬場へ向かいます。

  5. 火葬・収骨

    火葬炉の前で短いお別れをして火葬し、収骨します。

必要な書類は、死亡診断書(または死体検案書)、死亡届、火葬許可証です。これらは葬儀社が手続きを代行してくれることが多いですが、誰が届け出るのかは決めておくと安心です。火葬場が混み合う地域では、24時間ルールに加えて予約の都合で火葬までの日数が延び、安置費用が加算されることがあります。

【重要】直葬で「別途」になりやすい費用

直葬でもっともつまずきやすいのが、基本料金に含まれない「別途費用」です。広告の低価格プランは最低限の構成で、実際には次のような費用が加わって総額が上がります。

別途になりやすい項目発生する条件影響
火葬場の住民区分による加算火葬場のある自治体の住民でない場合例:臨海斎場は組織区民44,000円→区外88,000円
ご遺体の安置・ドライアイス火葬までの日数が延びた場合1日ごとに加算
搬送距離の超過病院や自宅から遠い場合、規定距離を超える場合距離に応じて加算
待合室・控室の使用火葬を待つ間に利用する場合施設ごとに使用料
宗教者の手配・読経火葬前に読経を頼む場合お布施・手配料
骨壷・棺のグレード変更標準品から変更した場合差額

「安いプラン」を検討するときは、金額の安さではなく「その金額に何が含まれ、何が別途か」を確認することが大切です。とくに火葬料の住民区分と安置日数は、東京では総額を大きく左右します。

直葬のメリットと、後悔しないための注意点

直葬には費用面・負担面のメリットがある一方、儀式を省くことによる注意点もあります。

メリットは、費用をもっとも抑えられること、参列者への対応が不要で遺族の負担が軽いこと、高齢の喪主でも進めやすいことです。身寄りが少ない、遠方の親族が集まりにくい、経済的な事情があるといった場合に、現実的な選択肢になります。

一方で、注意したい点もあります。お別れの時間が火葬炉の前の数分のみで、あとから「きちんと見送れなかった」と感じる遺族もいます。また、親族に相談せず直葬にすると、事後に「なぜ普通の葬儀にしなかったのか」と受け取られ、関係がこじれることがあります。費用だけで決めず、家族で意向をそろえておくことが、後悔を減らすことにつながります。

直葬の香典・参列・弔問はどうなる

直葬で参列するのは、家族やごく近しい親族だけになることが一般的です。会社関係や友人・知人には、あとから訃報を知らせる形が多くなります。

香典については、直葬では受け取らない(辞退する)ケースが多く見られます。香典を辞退すれば香典返しの準備も不要になり、遺族の手間は軽くなります。一方で香典による費用の補填はなくなるため、費用は自己負担が基本になると考えておくとよいでしょう。

葬儀に参列できなかった方が、後日あらためて弔問に訪れたり、お別れ会を開いたりすることもあります。誰にいつ知らせるか、弔問をどう受けるかを決めておくと、あとの対応がスムーズになります。

菩提寺・納骨の注意(読経なしで納骨を断られることがある)

先祖代々のお墓(菩提寺)がある場合は、とくに注意が必要です。読経を省く直葬では、菩提寺に事前相談をしないと、そのお墓への納骨を断られることがあります。あとから読経を依頼して費用が発生し、結果的に割高になることもあります。

菩提寺がある方は、直葬を決める前にお寺へ相談し、納骨や供養の方針を確認しておくことをおすすめします。菩提寺がない場合や、納骨堂・散骨・手元供養などを検討している場合は、直葬との相性は比較的よいといえます。

直葬後の納骨・供養の選択肢

直葬のあと、遺骨をどう納めるかは自由に選べます。おもな選択肢と費用の考え方を整理します。

  • 菩提寺・一般のお墓:先祖代々のお墓に納骨します。読経を省いた直葬では、事前相談が欠かせません。
  • 公営・民営の霊園:新たにお墓を求める場合の選択肢です。永代使用料や墓石の費用がかかります。
  • 納骨堂:屋内で遺骨を安置する施設です。お墓より費用を抑えやすく、承継の負担も軽くなります。
  • 樹木葬・散骨:自然に還す形の供養で、承継を前提としない見送りとして選ばれています。
  • 手元供養:遺骨の一部を自宅で保管したり、小さな骨壷やペンダントにしたりする方法です。

供養の方法によって費用や手間は大きく変わります。直葬を決めるときは、火葬のあとの納骨・供養まで含めて考えておくと、あとから慌てずに済みます。

費用を抑える方法と、使える公的支援

直葬の費用を抑える現実的な方法と、申請できる公的支援を整理します。

費用を抑えるには、公営の火葬場を利用する、複数の葬儀社から同じ条件で見積もりを取る、別途になりやすい項目を事前に確認する、といった方法があります。安さだけで選ぶと別途費用で相場帯に収束することもあるため、「総額でいくらか」で比べることが大切です。

公的支援としては、次のものがあります。金額や要件は加入先や自治体で異なるため、目安として確認したうえで、実際の窓口で最新の内容を確認してください。

  • 葬祭費・埋葬料:故人が国民健康保険などに加入していれば葬祭費(自治体により1万〜7万円程度、東京23区は7万円)、健康保険なら埋葬料(原則5万円)が、申請により支給されます。申請期限はおおむね2年です。
  • 葬祭扶助(生活保護):経済的に困窮し葬儀費用を負担できない場合、自治体が最低限の葬祭費用(直葬に相当する範囲)を負担する制度があります。原則として葬儀の前に申請が必要で、上限額があります。要件は自治体によって異なるため、お住まいの福祉事務所で確認してください。

身寄りのない方・孤独死の場合の直葬

直葬は、身寄りのない方や、賃貸住宅で一人暮らしの方が亡くなったときにも選ばれます。ここは、標準的な家庭を前提とする一般的な解説では抜けやすい領域です。

日本の年間死亡数は増え続けており、令和6年(2024年)は1,605,378人と過去最多で、4年連続の増加でした。いわゆる多死社会が進むなか、一人暮らしの高齢者が自宅で亡くなるケースも増えています。

東京都監察医務院の統計では、東京23区内で自宅で亡くなった単身世帯の方は令和3年(2021年)で5,851人にのぼり、その約7割が65歳以上でした(この数値は東京23区に限った、令和3年時点の公表値です)。単身の場合は発見までに数日以上かかることも多く、住まいの原状回復が必要になる場面もあります。

身寄りが少ない方が亡くなった場合、直葬を進めるうえで次のような実務が伴います。誰が喪主となり火葬許可の手続きをするか、遠方の親族とどう連絡・調整するか、賃貸住宅の退去期限までに片付けをどう進めるかです。とくに賃貸では、葬儀と並行して残置物の撤去や特殊清掃を進めなければならないことがあります。賃貸住宅の場合は、貸主や管理会社への連絡、退去期限までの原状回復も並行して進める必要があります。引き取る親族がいない場合には、法律にもとづいて自治体が火葬を行う仕組みもあります。いずれのケースでも、費用を誰がどう負担するか、片付けをどう進めるかを早めに整理しておくことが、負担を軽くする鍵になります。

こうした現場対応は、遺品整理・特殊清掃の実務と直結します。孤独死や特殊清掃をともなうケースの対応については、残置物撤去・特殊清掃のページもあわせてご覧ください。

直葬と「そのあと」の費用をまとめて考える

直葬を選ぶ方ほど、火葬のあとに続く費用まで含めて考えておくことが大切です。火葬が終わっても、次のような支出が待っています。

直葬のあとに発生しやすい費用内容
遺品整理故人の家財の整理・処分。間取りや物量で変動
残置物の撤去・特殊清掃賃貸住宅の原状回復、孤独死の場合の消臭・清掃
納骨・供養墓・納骨堂・散骨・手元供養などの費用
各種手続き名義変更、解約、相続手続きなど

直葬の費用だけを見て資金計画を立てると、このあとの遺品整理や住まいの片付けで想定外の出費が重なることがあります。とくに賃貸住宅では、退去期限までに残置物を撤去する必要があり、直葬と並行して進めなければならない場面もあります。費用の全体像を早めに把握しておくと、慌てずに準備できます。

まとめ

  • 直葬・火葬式の全国平均は約43万円(鎌倉新書2024)で、形式のなかでもっとも費用を抑えられます。ただし含まれる範囲や火葬料の地域差で幅があります。
  • 火葬料は地域差が大きく、東京の公営火葬場でも住民区分で変わります(臨海斎場 組織区民44,000円・区外88,000円、都立瑞江 都民59,600円)。
  • 直葬は死後24時間を経過してから火葬でき、死亡届と火葬許可が必要です。
  • 安置日数の延長や住民区分の加算など「別途費用」で総額が上がりやすいため、見積書は総額で確認します。
  • 菩提寺がある場合は、納骨を断られないよう事前に相談します。
  • 直葬のあとの遺品整理や住まいの片付けまで含めて、全体で資金計画を立てると安心です。

参考にした調査・制度

よくある質問

直葬の費用はいくらですか?
鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」(2024年)では、直葬・火葬式の平均は約42.8万円でした。ただし含まれる範囲や火葬料の地域差で幅があり、東京の公営火葬場でも火葬料だけで4万円台から8万円台(住民区分により変動)かかります。搬送距離や安置日数、別途費用によって総額は変わります。
直葬でも火葬の許可は必要ですか?
必要です。死亡届を提出して市区町村長の火葬許可を受けます。また墓地埋葬法により、原則として死亡後24時間を経過しないと火葬できません(妊娠7か月に満たない死産などを除く)。火葬は火葬場以外の施設では行えません。
菩提寺があると直葬でトラブルになりますか?
読経を省く直葬は、菩提寺に事前相談をしないと納骨を断られることがあります。先祖代々のお墓がある場合は、事前にお寺へ相談しておくと、後日の読経やお布施で結局割高になる事態を避けやすくなります。
生活保護でも直葬はできますか?
葬祭扶助という制度により、自治体が最低限の葬祭費用(直葬に相当する範囲)を負担する仕組みがあります。原則として葬儀の前に申請が必要で、上限額があります。要件は自治体によって異なるため、お住まいの福祉事務所で確認してください。

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