エンディングノートの書き方|何を書くか項目一覧と、家族が本当に困らない残し方

写真は一部AI生成のイメージです

監修・編集責任

山本貴大

株式会社ローカルマーケティングパートナーズ 代表

本記事は、法務省(遺言・自筆証書遺言書保管制度)などの公的情報にもとづき、遺品整理・残置物対応の現場で得た知見をあわせてまとめています。

エンディングノートとは、自分にもしものことがあったときのために、財産や希望、家族に伝えたいことを書き残しておくノートです。遺言書と違って書き方に決まりはなく、元気なうちから気軽に始められます。

この記事では、エンディングノートに何を書くか、項目の一覧と書き方のコツを、遺品整理の現場の視点でまとめます。項目を平等に並べるのではなく、「これを書いておくと、残された家族と片付けの現場が本当に助かる」という順に整理します。デジタル遺品や暗証番号の安全な残し方、賃貸・ひとり暮らしの方が書いておきたいことなど、他ではあまり触れられない点も扱います。

エンディングノートとは

エンディングノートは、終活の一環として、自分の情報や希望をまとめておくノートです。目的は、残された家族が困らないようにすることと、自分の意思を伝えることの2つです。

亡くなった後、家族は限られた時間のなかで、葬儀の手配や、口座・契約の整理、各種の手続きに追われます。どこに何があるのか、本人しか知らない情報が多いと、家族は手探りで進めるしかありません。エンディングノートに情報がまとまっていれば、その負担を大きく減らせます。

書くのは、喪主や手続きを担うことになりそうな家族を持つ本人が中心です。親に書いておいてほしいと、子の側から用意するケースもあります。どちらの場合も、家族と一緒に考えておくと、いざというときに役立ちます。

エンディングノートを書くメリット

エンディングノートを書いておくと、家族にとっても本人にとっても、いくつもの利点があります。

いちばんは、残された家族の負担が減ることです。財産や契約、連絡先がまとまっていれば、家族は手続きに迷わず、短い時間で必要な対応を進められます。次に、自分の希望を確実に伝えられることです。医療や介護、葬儀やお墓について元気なうちに考えを書いておけば、家族が判断に迷う場面を減らせます。

本人にとっての利点もあります。資産や契約を書き出す作業は、自分のお金や持ち物を棚卸しする機会になり、忘れていた口座や、使っていないサービスに気づくことがあります。そして、これまでの人生を振り返り、これからをどう過ごすかを考えるきっかけにもなります。エンディングノートは「終わりの準備」であると同時に、「これからを整える」ための道具でもあります。

エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートを書くうえで、最初に押さえておきたいのが遺言書との違いです。もっとも大きな違いは、法的な効力の有無です。

項目エンディングノート遺言書死後事務委任契約
法的効力ない(想い・情報の共有)ある(財産の分け方など)ある(依頼した手続きの実行)
おもな内容資産・希望・連絡先・メッセージなど自由相続財産の分け方、相続人の指定など葬儀・納骨・各種の解約手続きなど
形式・費用決まりなし。市販・自治体配布・自作方式が厳格(自筆証書・公正証書など)依頼先(専門家・法人など)との契約

エンディングノートは、法律上の制度ではありません。そのため、財産の分け方を書いても、そのとおりに実行される法的な保証はありません。財産の分け方を確実に指定したいときは、法律で定められた方式で書く遺言書が必要です。自筆で書いた遺言書は、法務局が保管する自筆証書遺言書保管制度に預けておくと、紛失や改ざんを防げます(保管の申請は一件につき3,900円)。

葬儀や納骨、各種サービスの解約といった「手続きの実行」を誰かに頼んでおきたい場合は、死後事務委任契約という方法もあります。つまり、財産の分け方は遺言書、手続きの実行は死後事務委任契約、想いや情報の共有はエンディングノート、と役割で使い分けるのが基本です。相続に向けた準備は、生前整理でやっておく相続・法的な準備でくわしく解説しています。

家族と片付けの現場が本当に困る情報

エンディングノートには書ける項目がたくさんありますが、すべてを完璧に埋める必要はありません。遺品整理の現場から見ると、残された家族が本当に困るのは、次のような「本人しか知らない情報」です。優先して書いておくと、家族の手間と費用が変わります。

優先して書いておきたい情報

すぐ必要になるもの

家や金庫の鍵、通帳・印鑑・保険証券の在りか、緊急の連絡先。

  • 「どこにあるか」を書く

解約・手続きが要るもの

契約中のサブスク、携帯、公共料金、保険、ネットの有料サービス。

  • 放置すると請求が続く

残す物・手放してよい物

形見に残したい物と、処分してよい物の区別。

  • 「勝手に処分された」を防ぐ

とくに大切なのが「在りか」です。通帳や権利証、貴重品がどこにあるかが分からないと、家族は家じゅうを探すことになります。次に、解約が必要な契約です。本人が亡くなっても自動では止まらないため、把握できていないと、使っていないサービスの料金が引き落とされ続けます。そして、形見として残したい物と処分してよい物の区別です。ここが曖昧だと、遺品整理の際に「大切な物を勝手に処分された」というトラブルにつながります。価値のある品や買取に出せそうな物があれば、その点もメモしておくと、遺族が処分の費用を抑える判断をしやすくなります。遺品整理にかかる費用の目安は遺品整理の費用相場で確認できます。

エンディングノートに書く項目

優先度の高いものを押さえたうえで、エンディングノートに書く項目を整理します。次の6つが基本です。書けるところから、少しずつ埋めていきましょう。

自分の基本情報

氏名・生年月日・本籍、保険証や年金手帳の保管場所。

資産・お金

預貯金・保険・不動産・借入。口座は金融機関名まで書く。

デジタルの情報

スマホ/PC、ネット銀行・証券、サブスク、SNSの一覧。

医療・介護の希望

持病・かかりつけ医、延命治療や介護についての希望。

葬儀・お墓・連絡先

葬儀やお墓の希望、亡くなったときに知らせてほしい人。

家族へのメッセージ

感謝や伝えておきたいこと。ペットの世話の引き継ぎも。

資産の欄では、預貯金・保険・不動産・証券を、金融機関名や種類、連絡先まで書いておくと、家族がそのまま手続きに使えます。とくに見落とされやすいのが、借入や連帯保証といったマイナスの財産です。もし借金のほうが多い場合は、相続放棄という選択もありますが、これには相続の開始を知った時からの期限があるため、財産の全体像を残しておくことが家族の判断を助けます。

医療・介護の希望は、本人が判断できなくなったときに家族が迷わないための情報です。持病やかかりつけ医、飲んでいる薬、延命治療をどうしてほしいか、介護が必要になったときの希望などを書いておきます。

葬儀やお墓の希望も、家族が決めかねやすい項目です。宗教や形式、呼ぶ範囲、予算の目安、入りたいお墓や、逆に「こうはしてほしくない」という点まで書いておくと、家族が費用や内容を決めやすくなります。葬儀の希望を前もって相談しておく方法は、葬儀の事前相談でまとめています。

連絡先については、亡くなったときに知らせてほしい人の一覧をつくっておくと、家族が訃報の連絡に困りません。名前と連絡先に加えて、その人との関係を書いておくと、家族が誰に何を伝えるべきか判断しやすくなります。

これらの実務的な情報に加えて、自分のこれまでの歩みや、これからやりたいこと、家族や大切な人へのメッセージを書き添える人もいます。義務ではありませんが、こうした言葉は、残された家族にとって何よりの支えになることがあります。手続きのための情報と、想いを伝える言葉の両方を残せるのが、エンディングノートの良さです。

デジタル遺品と暗証番号の安全な残し方

近年とくに家族を困らせるのが、スマートフォンやパソコンの中にある「デジタル遺品」です。本人にしかロックやパスワードが分からないと、家族は連絡先も写真も確認できず、ネット銀行や証券、有料サービスの解約にも苦労します。

ここで注意したいのが、暗証番号やパスワードそのものをノートに書き込まないことです。エンディングノートを紛失したり、第三者に見られたりすると、そのまま悪用されるおそれがあります。安全なのは、番号自体は書かず、「たどれる手がかり」を残す方法です。

まずは、利用しているサービスを書き出すところから始めます。ネット銀行・証券、電子マネー、ポイント、月額のサブスク、SNS、写真の保存サービスなどを一覧にし、「解約が必要か」「家族に引き継ぐか」を分けておくと、遺族が判断しやすくなります。パスワードをどこで管理しているか(管理アプリの名前や、別に保管したメモの在りか)も書いておきます。

スマートフォンやパソコンは、家族がロックを解除できないと中身にアクセスできません。解除の手がかりを信頼できる家族に伝えておくか、安全な場所に残しておきます。二段階認証を設定している場合は、その点も書き添えておくと、家族が手続きの途中で行き詰まりにくくなります。番号を直接書くのではなく「在りかと手がかり」を残す、と覚えておくと、安全と利便性を両立できます。

賃貸・ひとり暮らしの人が書いておくこと

市販のエンディングノートの多くは、持ち家で家族と同居している人を想定しています。しかし、賃貸住宅やひとり暮らしの場合は、書いておきたいことが変わります。ここは見落とされがちな部分です。

賃貸住宅に住んでいる場合、亡くなった後は退去期限までに家財を運び出す必要があり、家族に時間の余裕がありません。次のような情報を残しておくと、残された人の負担が大きく変わります。賃貸借契約書の保管場所、管理会社や大家さんの連絡先、連帯保証人が誰か、そして緊急時に連絡してほしい人です。

ひとり暮らしの場合は、かかりつけ医や、親しい友人・親族の連絡先も書いておくと、いざというときに周囲が動けます。あわせて、加入している見守りサービスや、緊急時に開けてほしい引き出しの場所などを書いておくと安心です。財布やカバンに、緊急連絡先を書いた小さなカードを入れておくと、外出先で倒れたときにも周囲が対応しやすくなります。

賃貸物件で入居者が亡くなったときの家財の扱いについては、残置物とはで、所有権や撤去の考え方を解説しています。

いつから・どう書くか

エンディングノートに「何歳から」という決まりはありません。退職や還暦、子どもの独立、入院などをきっかけに始める方が多く、判断力と体力があるうちに書き始めるのが基本です。40〜50代で、親の介護や身近な人の相続をきっかけに書き始める人もいます。若いうちに書く場合は、資産や葬儀よりも、緊急連絡先やスマホ・SNSの情報など、いま必要になりやすい情報から始めると実用的です。年齢よりも「気になったとき」が始めどきです。次の流れで進めると、無理なく続けられます。

エンディングノートの始め方
  1. ノートを用意する

    市販のノート、自治体の配布物、普通のノートやアプリなど、手に入れやすいもので始めます。

  2. 書けるところから書く

    すべてを埋めようとせず、基本情報や連絡先など、書きやすい項目から手をつけます。

    鉛筆で書くと、あとで直しやすくなります。

  3. 保管場所を決めて家族に伝える

    書いたら安全な場所に保管し、その在りかを信頼できる家族に伝えます。

  4. 定期的に見直す

    契約や資産、気持ちは変わります。年に一度など、区切りで内容を更新します。

完璧に仕上げようとすると、かえって書けなくなります。空欄があっても構いません。書ける項目から少しずつ埋め、変化があれば書き直す、という気軽な姿勢で続けるのがこつです。内容が古いまま放置されると、かえって家族が混乱するため、定期的な見直しを習慣にしておきます。

書くうえで、気をつけたい点もあります。ひとつは、エンディングノートだけでは相続の手続きはできないことです。財産の分け方を法的に指定したいなら、前述のとおり遺言書が必要になります。もうひとつは、家族に押し付けないことです。自分の希望は書いても、最終的にどうするかは家族に委ねる、という姿勢でいると、受け取る側の負担になりません。そして、引っ越しや口座の解約、契約の変更があったら、その都度書き直しておくと、家族が古い情報に振り回されずに済みます。

どこで手に入れるか

エンディングノートは、いくつかの方法で用意できます。自分に合ったもので構いません。

書店や文具店では、項目があらかじめ用意された市販のノートが手に入ります。お住まいの自治体が、終活の支援として無料で配布している場合もあります。特別なノートを買わなくても、手持ちのノートやパソコン、スマートフォンのアプリで作ることもできます。市販のノートは項目が整理されていて書きやすい一方、自作なら自分に必要な項目だけを自由にまとめられます。まずは手に入れやすいもので始めて、続けるうちに自分に合った形に変えていくとよいでしょう。

保管と家族への共有

エンディングノートは、書いて終わりではありません。いざというときに家族が見つけられなければ、意味がありません。

保管場所は、家族が見つけやすく、かつ他人には見られにくい場所を選びます。書いたことは、信頼できる家族に「エンディングノートを書いた」「どこにある」と伝えておきます。暗証番号などの重要な情報を含むため、保管場所には配慮しつつ、在りかは共有しておく、というバランスが大切です。

注意したいのは、銀行の貸金庫に入れてしまうと、いざというときに家族がすぐ開けられない場合があることです。名義人が亡くなると、貸金庫の中身を取り出すのに相続の手続きが必要になることがあります。すぐ取り出せる場所に置き、内容を知っている人を確保しておくと安心です。内容を更新したときも、そのつど家族に一言伝えておくと、古い情報で混乱するのを防げます。

生前整理・葬儀の準備とあわせて

エンディングノートを書くことは、生前整理や葬儀の準備と地続きです。情報を書き残すことと、住まいの家財を整理すること、葬儀の希望を決めておくことは、どれも「残される家族の負担を軽くする」準備だからです。

エンディングノートで情報をまとめながら、住まいの生前整理を進め、葬儀の事前相談で希望を家族と共有しておくと、いざというときの負担がぐっと軽くなります。とくに賃貸住宅の場合は、遺品整理の費用の目安を知っておくと、家族が慌てずに準備できます。エンディングノートを入り口に、少しずつ全体を整えていくと安心です。

まとめ

  • エンディングノートとは、財産や希望、家族に伝えたいことを書き残しておくノートです。書き方に決まりはありません。
  • 法的効力はないため、財産の分け方は遺言書、手続きの実行は死後事務委任契約、と役割で使い分けます。
  • 現場で家族が本当に困るのは「在りか」「解約が必要な契約」「残す物・処分してよい物の区別」です。ここを優先して書きます。
  • 暗証番号やパスワードは直接書かず、在りかと手がかりを残すのが安全です。
  • 賃貸・ひとり暮らしの人は、契約書の場所・管理会社・連帯保証人・緊急連絡先を書いておきます。
  • すべてを埋めようとせず、書けるところから始め、保管場所を家族に伝え、定期的に見直します。

参考にした調査・制度

よくある質問

エンディングノートには何を書けばいいですか?
自分の基本情報、預貯金や保険などの資産、スマホやネット口座などのデジタル情報、医療・介護の希望、葬儀やお墓の希望、連絡してほしい人、家族へのメッセージが基本です。すべてを埋める必要はなく、書けるところから始めて構いません。
エンディングノートは何歳から書くとよいですか?
決まった年齢はありません。退職や還暦、子どもの独立、入院などをきっかけに始める方が多いです。判断力と体力があるうちに書き始め、状況が変わったら見直すのが基本です。
エンディングノートと遺言書はどう違いますか?
エンディングノートに法的効力はなく、想いや情報を家族に伝えるものです。財産の分け方を確実に指定したい場合は、法律で定められた方式で書く遺言書が必要です。手続きの実行を依頼したい場合は死後事務委任契約という方法もあります。
エンディングノートに暗証番号やパスワードを書いてもいいですか?
暗証番号やパスワードそのものを書き込むのは避けたほうが安全です。ノートを紛失したり第三者に見られたりすると悪用のおそれがあります。口座やサービスの一覧と、パスワードの保管場所(管理アプリや別のメモの在りか)を書いておき、番号自体は別に管理する方法が安全です。
エンディングノートはどこで手に入りますか?
書店や文具店で市販されているほか、お住まいの自治体が無料で配布している場合があります。市販のノートや普通のノート、パソコン、アプリでも作れます。まずは手に入れやすいもので始めるとよいでしょう。
エンディングノートはどこに保管すればいいですか?
家族が見つけやすく、他人には見られにくい場所に保管し、信頼できる家族に「書いたこと」と「在りか」を伝えておきます。銀行の貸金庫は、名義人が亡くなるとすぐに開けられないことがあるため、すぐ取り出せる場所と併用すると安心です。内容を更新したら、そのつど家族に伝えておきましょう。

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