単身の高齢者に部屋を貸すとき、大家や管理会社が不安に感じるのが「入居者が亡くなった後、契約の解除や室内に残された家財(残置物)の処理が進められないのではないか」という点です。この不安に応えるために国が用意したのが、残置物の処理等に関するモデル契約条項と、2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法です。本記事は、この2つの制度を管理会社・大家の実務目線で整理します。
残置物そのものの意味は残置物とは、退去・死亡後の実務的な同意書は残置物処分の同意書で扱います。
残置物の処理等に関するモデル契約条項とは
残置物の処理等に関するモデル契約条項は、国土交通省と法務省が策定したひな形です。単身の高齢入居者が亡くなった後に、賃貸借契約の解除と居室内の残置物の処理を、あらかじめ定めた受任者が代わりに進められるようにするためのものです。
背景には、相続人の有無や所在が分からない単身入居者が亡くなると、契約解除も残置物処理も法的に進められず部屋が長期間動かせない、という問題があります。これを恐れて大家が高齢者の入居申込みを断る事態を避ける狙いがあります。活用のためのガイドブックは令和7年(2025年)10月時点で第2版が公表されています。
2つの契約で構成される
モデル契約条項は、入居者(賃借人)と受任者の間で結ぶ2つの死後事務委任契約から成ります。
| 契約 | 内容 |
|---|---|
| 解除関係事務委任契約 | 入居者の死亡後に、受任者が賃貸借契約の解除手続きを代行する |
| 残置物関係事務委託契約 | 契約終了後に、受任者が居室内の残置物を廃棄・指定先へ送付する(換価できる物は売却に努める) |
ポイントは、これらを生前に結んでおくことです。亡くなった後に慌てて対応するのではなく、入居の段階で備えておく仕組みです。
受任者には誰がなるのか
受任者は、入居者本人や大家ではなく、第三者が望ましいとされています。具体的には居住支援法人や管理業者などが想定されます。大家本人が受任者になると利益相反などの問題が生じうるためです。
改正住宅セーフティネット法(2025年10月1日施行)で変わったこと
2025年(令和7年)10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法は、上のモデル契約条項を法律の面から後押しするものです。主な改正点は次のとおりです。
- 居住支援法人の業務に残置物処理等業務が追加された(残置物処理等業務規程の作成・認可が必要)
- 居住サポート住宅の認定制度が創設された
- 終身建物賃貸借制度の導入、認定・登録家賃債務保証業者制度の改正
これにより、居住支援法人が残置物処理の担い手として制度に位置づけられました。入居者と居住支援法人があらかじめ取り決めをしておけば、死亡後の残置物処理を相続人に代わって円滑に進められる仕組みが設けられています。
管理会社・大家にとってのメリット
この制度を使うと、単身高齢者にも安心して貸し出せる素地ができます。死亡後の残置物リスクを入居時に手当てしておけるため、空室を埋めやすくなり、いざというときの原状回復・再募集も止まりにくくなります。残置物の撤去・特殊清掃・原状回復までを見据えて、受任者や提携先の体制を整えておくことが実務上の備えになります。
なお、生前に備えるのがモデル契約条項、すでに退去・死亡が起きた後に相続人・連帯保証人から同意を得て処分するのが同意書、という役割の違いがあります。実際の費用負担は残置物撤去の費用と「誰が払う」を参照してください。
残置物・高齢者入居でお困りの管理会社・居住支援法人の方へ
残置物の事前手当てから、実際の撤去・特殊清掃・原状回復までをまとめてご相談いただけます。お問い合わせは [[email protected]] までご連絡ください。
出典(一次ソース)
- 国土交通省「住宅:残置物の処理等に関するモデル契約条項」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000101.html (2026-06-20確認。解除関係事務委任契約・残置物関係事務委託契約の2契約構成、ガイドブック令和7年10月第2版、居住支援法人による残置物処理)
- 国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk7_000054.html (2026-06-20確認。令和7年10月1日施行、居住支援法人の残置物処理等業務、居住サポート住宅の創設、終身建物賃貸借)
- 法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00262.html (2026-06-22確認)


