一日葬(いちにちそう)は、通夜を省き、告別式と火葬を1日で行う葬儀です。家族葬とともに、費用や負担を抑えられる形式として選ばれています。ただ、「一日葬にしたのに、思ったほど安くならなかった」という声も少なくありません。
先に結論をお伝えします。鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」(2024年)によると、一日葬の平均費用は約87.5万円でした。通夜を省くと飲食などの費用は減りますが、祭壇や会場、火葬にかかる費用は大きくは変わりません。そのため、一般葬や家族葬に比べて「劇的に安い」わけではない、という点を知っておくことが大切です。
この記事では、一日葬の費用相場と、削れる費用・削れない費用の内訳、家族葬や直葬との違い、菩提寺の確認、流れと注意点、そして一日葬のあとに続く片付けの費用までを、特定の葬儀社に誘導せず中立にまとめます。遺品整理の情報を扱う立場から、葬儀のあとの費用まで含めて解説します。
一日葬とは(通夜を省く葬儀)
一日葬は、一般的な葬儀が「通夜 → 告別式 → 火葬」と二日にわたって行うのに対し、通夜を省いて告別式と火葬を1日で行う形式です。参列するのは家族や近しい親族が中心になることが多く、家族葬を一日で行う形とも言えます。
鎌倉新書の第6回調査(2024年)では、一日葬を選んだ人は全体の10.2%でした。最新の第7回(2026年)では、家族葬が最多を維持する一方で一日葬や直葬・火葬式が微増し、葬儀の多様化が進んでいます。通夜にかかる時間や費用、遺族の負担を軽くしたいという理由で選ばれています。儀式そのものは行うため、火葬だけの直葬とは異なり、告別式でお別れの時間を持てるのが特徴です。
一日葬が選ばれる背景
一日葬が選ばれるようになった背景には、社会の変化があります。
日本の年間死亡数は令和6年(2024年)に約161万人と過去最多になり、大規模な葬儀を望まない人が増えています。高齢の単身世帯が増え、参列者が限られる見送りが自然と選ばれるようになりました。
また、宗教的な形式にこだわらず、遺族の負担を抑えたいという価値観も広がっています。通夜を省いて一日で見送る一日葬は、こうした流れのなかで、家族葬とともに選択肢のひとつになっています。
一日葬の費用相場【平均88万円】
まず、他の形式と比べた一日葬の位置づけを確認します。
一日葬の平均は約87.5万円で、家族葬(約106万円)と直葬(約43万円)の間に位置します。ただし、含まれる範囲や参列人数、地域によって幅があります。広告の「〇万円プラン」は最低限の構成であることが多いため、実際の総額とは分けて考える必要があります。
なお、葬儀社が自社の利用者向けに集計した調査などでは、これより低い平均を示すものもあります。数字は調査の対象や含まれる範囲によって変わるため、ひとつの平均だけを鵜呑みにせず、複数の見積もりで確認することが大切です。
一日葬の費用の「削れる項目・削れない項目」
一日葬でもっとも誤解されやすいのが、「通夜を省けば費用が半分になる」という点です。実際には、通夜を省いて減るのは費用の一部だけで、大きな部分は変わりません。何が削れて何が削れないのかを整理します。
| 費用の項目 | 一日葬での扱い |
|---|---|
| 通夜振る舞いの飲食 | 通夜がないため削れる |
| 通夜分の返礼品・人件費 | 一部削れる |
| 祭壇・棺 | 一般葬・家族葬と同等で削れない |
| ご遺体の搬送・安置 | 削れない |
| 式場・斎場の使用料 | 削れにくい(1日でも施設を確保するため) |
| 火葬料 | 削れない(地域・住民区分で変動) |
| お布施(読経・戒名) | 規模に関係なく発生し、削れない |
| 運営スタッフの人件費 | 一般葬と大きく変わらない |
削れるのは、通夜にともなう飲食や一部の返礼品です。祭壇・棺・会場・火葬料・お布施といった費用は、通夜を省いても大きくは下がりません。これが、一日葬が「思ったほど安くならない」理由です。とくに式場・斎場の使用料は、一日葬でも一般葬とあまり変わらないことがあります。通夜を行わなくても告別式の会場を確保する必要があり、施設によっては二日分に近い料金がかかる場合もあるためです。安さだけを期待するのではなく、通夜を省くことで何が変わるのかを理解して選ぶことが大切です。
家族葬・直葬との違い
一日葬を検討するときは、家族葬や直葬との違いも知っておくと、納得して選べます。
家族葬は、通夜と告別式の両方を行い、身内でゆっくり見送る形式です。一日葬は、その通夜を省いた形にあたります。直葬・火葬式は、儀式を行わず火葬だけで見送るため、費用はもっとも抑えられますが、お別れの時間はごく短くなります。
費用は一般葬・家族葬・一日葬・直葬の順に抑えられますが、一日葬と家族葬の差は、通夜の有無による飲食費の分が中心です。「きちんと告別式で見送りたいが、通夜までは行わなくてよい」と考えるなら一日葬、「身内で通夜から見送りたい」なら家族葬、という選び方になります。費用の面では、一日葬は家族葬より通夜の飲食分ほど安く、直葬よりは告別式のぶん高くなります。ただし家族葬との差はそれほど大きくないため、「少しでも通夜の負担を減らしたい」という理由で選ばれることが多い形式です。それぞれの費用は、家族葬の費用と直葬・火葬式の費用のページで解説しています。
一日葬の流れ
一日葬の流れは、通夜がないほかは一般的な葬儀とほぼ同じです。
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ご逝去・搬送・安置
病院や自宅から安置場所へ搬送し、火葬まで安置します。
墓地埋葬法により、原則として死亡後24時間を経過しないと火葬できません。
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打ち合わせ・準備
葬儀社と形式・日程・見積もりを決め、死亡届と火葬許可の手続きを進めます。
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告別式
通夜は行わず、告別式でお別れをします。
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火葬・収骨
火葬場で火葬し、収骨します。
告別式の当日は、告別式から火葬、収骨までを半日ほどで行うのが一般的です。通夜と告別式で二日間にわたって拘束される一般葬に比べ、全体の拘束時間が短く、体力的な負担は軽くなります。
通夜を省くため、亡くなってから告別式までの日程は一般葬より短くなることが多いですが、火葬場の予約状況によっては日数が延び、安置費用が加算されることもあります。
一日葬のメリット
一日葬には、費用面・負担面のメリットがあります。
- 通夜の飲食や準備が不要になり、その分の費用と手間を抑えられます。
- 二日間にわたる拘束がなく、遺族の体力的・時間的な負担が軽くなります。
- 高齢の喪主や、遠方から集まる親族にとって、日程の負担が小さくなります。
- 直葬とは違って告別式を行うため、宗教的な区切りやお別れの時間を持てます。
一日葬のデメリット・注意点
一方で、通夜を省くことによる注意点もあります。
通夜がないため、仕事などで日中の告別式に参列できない方が出ることがあります。その場合、後日あらためて弔問に訪れる方への対応が必要になります。また、式が1日に集中するため、ゆっくりお別れができなかったと感じる遺族もいます。
年配の親族のなかには、「通夜をしないのは失礼」と考える方もいます。費用や日程だけで決めず、親族の理解を得ておくことが、後のトラブルを避けることにつながります。前述のとおり、費用の削減も通夜の飲食分が中心で、限定的である点も理解しておきましょう。
一日葬の香典・参列・後日弔問
一日葬で参列するのは、家族や近しい親族が中心です。会社関係や友人・知人には、あとから訃報を知らせる形が多くなります。
費用の面で注意したいのは香典です。参列者が少ないぶん香典の総額は減り、一般葬に比べて自己負担の割合が増える傾向があります。香典を辞退する家庭もあり、その場合は香典返しの手間がなくなる一方、費用は自己負担が基本になります。
とくに、平日の日中に行われる告別式は、仕事のある方には参列しにくいことがあります。通夜であれば夕方以降に参列できた方が、一日葬では都合をつけられないこともあります。誰に参列してほしいかを踏まえて日程や形式を考えると、こうした行き違いを減らせます。
通夜がないため、日中の告別式に参列できなかった方が、後日あらためて弔問に訪れることもあります。誰にいつ知らせるか、弔問をどう受けるかを決めておくと、あとの対応がスムーズになります。
【重要】菩提寺・宗教者の事前確認
菩提寺(先祖代々のお墓があるお寺)がある場合は、とくに注意が必要です。通夜を省く一日葬は、菩提寺の了解を得ないまま進めると、納骨や法要を断られることがあります。
一日葬を決める前に、菩提寺へ相談し、通夜を省く形でよいか、読経や戒名、納骨をどうするかを確認しておくことが大切です。お布施は葬儀の規模に関係なく発生し、通夜を省いても大きくは下がりません。菩提寺がない場合は、僧侶を手配するサービスを利用する方法もあります。
もし菩提寺から、通夜を省くことに理解を得られない場合は、通夜を行う家族葬に切り替える、あるいは後日あらためて法要を営む、といった方法を相談します。事情を伝えて相談すれば折り合える場合も多いため、自己判断で進めず、まずは連絡することが大切です。連絡をしないまま一日葬で済ませると、あとの納骨や法要で行き違いが生じることがあります。
一日葬で追加費用が出やすい項目
一日葬でも、基本料金に含まれない費用が加わって総額が上がることがあります。見積もりを比べるときは、次の項目が含まれているか、別途かを確認してください。
| 追加費用が出やすい項目 | 発生する条件 |
|---|---|
| ご遺体の安置・ドライアイス | 火葬までの日数が延びた場合 |
| 搬送距離の超過 | 病院や自宅が遠い場合 |
| 式場・斎場のグレード | 広い式場や設備を使う場合 |
| 参列者の増加 | 見込みより人が増え、飲食・返礼を追加する場合 |
| お布施・戒名 | 読経や戒名を依頼する場合 |
国民生活センターも、葬儀のトラブルを防ぐために「見積書を必ず受け取り、明細をよく確認すること」を勧めています。安さだけで判断せず、総額でいくらになるかを確認しましょう。
一日葬の支払い方法
葬儀費用は、葬儀後まもなくの支払いを求められることが一般的です。まとまった現金が急に必要になるため、支払い方法を先に確認しておくと安心です。
支払い手段は葬儀社によって異なり、現金のほかクレジットカードや分割払いに対応する社もあります。なお、故人の預金口座は、金融機関が死亡を把握すると凍結され、原則として相続手続きが済むまで自由に引き出せなくなります。「故人の口座から払えばよい」と考えていると、いざというときに使えないことがあるため、注意が必要です。
費用を抑える方法と使える公的支援
一日葬の費用を抑える方法と、申請できる公的支援を整理します。
費用を抑えるには、複数の葬儀社から同じ条件で見積もりを取り、総額で比べることが役立ちます。公営の火葬場が利用できる地域では、火葬料を抑えられます。安さだけで選ぶと別途費用がかさむこともあるため、含まれる範囲をそろえて比べることが大切です。
公的支援としては、故人が国民健康保険などに加入していれば葬祭費(自治体により1万〜7万円程度、東京23区は7万円)、健康保険なら埋葬料(原則5万円)が、申請により支給されます。申請期限はおおむね2年です。経済的に困窮している場合は、葬祭扶助という制度が使えることもあります。金額や要件は加入先や自治体で異なるため、窓口で確認してください。
一日葬が向いている人
一日葬は、次のような場合に向いています。
告別式できちんと見送りたいが、通夜までは行わなくてよいと考える場合。高齢の喪主や、遠方から集まる親族が多く、二日間の日程が負担になる場合。費用を抑えたいが、火葬だけの直葬では物足りないと感じる場合です。
反対に、通夜から時間をかけて見送りたい、多くの人に参列してほしいという場合は、家族葬や一般葬のほうが合っています。
一日葬と「そのあと」の費用をまとめて考える
一日葬の費用を考えるときも、葬儀のあとに続く費用まで見ておくことが大切です。葬儀が終わっても、次のような支出が待っています。
| 一日葬のあとに発生しやすい費用 | 内容 |
|---|---|
| 遺品整理 | 故人の家財の整理・処分。間取りや物量で変動 |
| 残置物の撤去・特殊清掃 | 賃貸住宅の原状回復、状況に応じた清掃 |
| 納骨・供養 | 墓・納骨堂・散骨・手元供養などの費用 |
| 各種手続き | 名義変更、解約、相続手続きなど |
葬儀の費用だけを見て資金計画を立てると、このあとの遺品整理や住まいの片付けで想定外の出費が重なることがあります。とくに賃貸住宅では、退去期限までに片付けを進める必要があり、葬儀と並行して動く場面もあります。費用の全体像を早めに把握しておくと、慌てずに準備できます。
まとめ
- 一日葬の平均は約87.5万円(鎌倉新書2024)で、家族葬と直葬の間に位置します。
- 通夜を省いて削れるのは主に飲食などで、祭壇・会場・火葬料・お布施は大きく下がりません。「思ったほど安くならない」のはこのためです。
- 家族葬との差は、通夜の有無による飲食費が中心です。
- 菩提寺がある場合は、通夜を省くことについて事前に相談します。
- 見積書は明細と総額を確認し、複数社を比べます。
- 一日葬のあとの遺品整理や片付けの費用まで含めて、全体で資金計画を立てると安心です。



